2007年 04月 12日
芽吹き |
森の木々がどんどん芽吹いてきました。
山全体が、柔らかい芽吹きの色をしています。白っぽい黄緑色や赤茶色っぽい色、その中にほんわか桜がところどころにまじっています。桜色も白っぽいものから、赤みのある色まで、さまざまにぼんやりと固まっています。もう少し紫みの強いのは、たぶんミツバツツジかなと思います。
一つの山にたくさんの色があるんですけど、パステルの世界で、どの色もファジーにかさなりあって、強烈な境はありません。眠くなってしまいそうな色の集まりです。
こういう状態を山笑うというそうですが、見ているほうも嬉しくなって思わずにっこり笑ってしまいます。
川沿いには黄色の強い黄緑色に芽吹いている木があります。ヤナギ系のようです。柔らかい色のなかでかなり目立ちます。
近くで見る木々の芽吹きは、それぞれ色も形も様々です。
リョーブの芽はチューリップみたいでとってもかわいらしい。葉っぱにはちょっと茶色っぽい縁取りがあります。これで葉に陰影がついているんでしょうか。小さな葉っぱたちが空に向かって開いています。そんな小さな葉っぱたちを青い空に向かって見上げるんです。やっぱり気持ちはてっぺんまでいってしまいますね。
エゴノ木は、かわいらしい米粒みたいな葉っぱが一枚づつ芽吹いています。
唐松も黄緑色の小さな針みたいな葉っぱをちょっとづつはじかせていきます。
一番に咲いたダンコウバイの花の上につんととがった芽が伸びてきました。シロモジ・クロモジもダンコウバイと似ています。黄色の小さな花々の上に、とがった葉っぱがくっついてます。細長いとがった芽は、気位が高そうな近寄りがたい雰囲気があります。
ホオノキの芽もつんと細長いんだけど、もう少し大きくて柔らかみがあります。色はむらきっぽい灰色です。それより色の濃い外側の皮が一枚だけ開いているさまは、簡潔な美しさ、わびさびの世界に通じるかもしれません。
アルマジロのしっぽみたいな芽もでています。よろいが重なったみたい。実はアルマジロは見たことありません。でもきっとこんなじゃあないかって想像してしまいそうな芽です。
細かいプリーツみたいに畳んでいた葉っぱを開こうとしている芽、白っぽい緑色の葉っぱの葉脈にそってきれいな赤色に染まって芽吹いてる葉っぱもあります。ビロードみたいな小さな葉っぱが5枚花みたいに開いているのは、なんでしょうか。青い空を背景にたくさん小さな葉っぱが輝いています。
ウリハダカエデの小さな花たちも咲いています。透明な緑みの黄色い小さな花が房になって、2、3枚柔らかい葉がすこしのぞいて、芽を包んでいた2枚の細長い萼みたいなのがついています。すっごくきれいな色です。紫と赤とピンクをまぜたみたいな、その外側にはもう少し濃い色の小さな萼が締めています。(この芽のぶしょの名前が分からないので、萼の部分は専門用語でなんていうかわかりません)花と葉っぱと萼の色と形がとってもよく調和していて美しい。いつも家庭訪問の頃咲くんですけど、今年はちょっと早いみたい。
山漆やクルミは枝のてっぺんに白っぽい茶色い葉っぱを丸めています。
タラの芽とコシアブラの芽はおいしいので、私にとっては特別な芽吹きになってしまいます。
木々の芽吹きは、ひとつひとつ形も色も全部違います。
それぞれの木々が一本、一本お日さまに向かって、芽吹き花を咲かせます。
木イチゴはすっかり芽吹いた葉っぱに白い花を咲かせています。山吹の花の色はあざやかです。
山の桜は種類が多くて見分けるのがむずかしい。
桜守の佐野籐右衛門さんによると(櫻よ・集英社刊)江戸彼岸の樹皮は縦に筋があるそうです。我が家の裏手にある桜は江戸彼岸のようです。桜は散り際が良いなんていいますけど、昨日の強い風にも散りません。なおかつ花びらはらはらではないようです、花ごと落ちてます。
長くて赤い子房のある桜は、チョウジ桜。崖のところにあるのが多分そうでしょう。こちらは花びらが一枚いちまい散って、赤っぽい子房だけになっています。
家の前にある山桜はまだ咲いてません。赤っぽい葉っぱとピンク色のつぼみがすこし顔をのぞかせてます。
籐右衛門さんによるとソメイヨシノはクローンで個性がないそうです。そういわれれば人工的な美しさかななんて、すぐに影響されやすい私です。でも、やっぱり圧倒的な美しさは感じます。
しかし、山には山の桜がそそと咲いてるのが似合いますね。
ソメイヨシノはやはり人が咲かせた花、見られるためにある花なんでしょう。自生の桜には、見られるためじゃない強さ、気高さ、媚びない美しさがあります。わざわざ見に行くんじゃなくて、たまたま歩いていたら咲いていた、わあきれいだって立ち止まって見て、また歩き出すんです。
春の山にはたくさん桜が咲いています。何回も立ち止まっては、また歩きましょう。それから木々の芽吹きも見ませんか。小さくて地味ですけど、ひとつひとつ大きさも形も色も全部違います。それぞれがそれぞれの葉っぱになるために、ちょっとづつ芽をふくらませ、開きます。
子ども達に似てるなあ、っていつも芽吹きを見ていると思います。ひとりひとり大人になるために、いろんな個性で芽吹いていく。森の木々を見守るみたいにひとつひとつの個性を見守って行けたらいいなあ。どれが美しいとか、かっこいいとかは、私たち人間の見た目だけなんですよね。それぞれが大人の形になるためにお日さまに向かって葉を広げているんですよね。
日ごと大きくなる森の葉っぱたちの芽吹きに手を叩きたくなります。
ちょっとでも目を離してしまうと、気が付いたときは、もう万緑の息苦しいほどの木々に囲まれてしまいます。
by henpen
| 2007-04-12 21:19
| 森の中